留学研修制度

当講座では本人の希望により国内外へ留学が可能です。臨床・研究とも日本国内では得られない幅広い知識・技術を習得することができます。またより現実的な選択肢として国内留学の機会も積極的にサポートしていく予定です。

留学体験記

坂本先生のドット絵
坂本 和郎 大阪府 国立循環器病研究センター

2023年4月から大阪府の国立循環器病研究センター(以下、国循)麻酔科でレジデントとして研修させていただいております。日々刺激的な症例を経験する機会を与えていただいておりご報告させていただきます。

国循は2021年に大阪府吹田市に移転し、新しい病院となっています。日本のナショナルセンターとして心臓血管、脳血管を対象とした最先端の大規模医療・研究機関です。病床数は550床、手術室は12室、年間手術件数は約2600件となっており心臓手術に関しては日本トップの件数を誇る病院です。一般的な心臓血管手術、小児先天性心疾患はもちろん、ロボットでの低侵襲手術や最新のデバイスを用いたカテーテル治療、人工心臓の植え込み、心移植などの珍しい手術も行われています。また救急体制も迅速なものがあり、電話連絡から執刀までの一刻を争うような超重症例や他院では救命困難な症例も行われています。

国循では術式別の管理を学ぶのではなく、根本の「循環管理」をしっかりご指導いただいています。日々様々な開心術やカテーテル治療の全身麻酔を担当する中で術式ごとに注意する点は多少違えども、根本的な「循環管理」は同じであると感じ、1症例1症例ごとに新しい経験と共に常に復習する機会が巡ってきます。また、レジデントは全国各地から集まり、臨床のモチベーションも高く、お互いに疑問点をぶつけあい、切磋琢磨していくことも日々面白く感じています。毎症例ごとのプレッシャーは大きいものですが、その分得られるものも大きいです。循環管理は一般麻酔だけでなく救急やICUなどにも応用ができるスキルと考えています。国循で勉強していくうちに一般麻酔でも自身の麻酔管理が変わってきたように感じます。

各病院で医療の特色はありますが、根本的な考え方は変わらないと思っています。研修後に岩手に戻った際にも、国循で学んだことを活かし、多少医局の刺激になればと思います。

さいごに、このような機会を与えていただいた鈴木教授、中野先生をはじめ医局の先生方に深く感謝申し上げます。

中野先生のドット絵
中野 雄介 大阪府 国立循環器病研究センター

私は2019年12月から2021年10月の間、大阪府吹田市にある国立循環器病研究センター(国循)への国内留学を経験しました。きっかけは大学時代の後輩が国循に勤めており、間もなく彼が大学へ戻るためにスタッフが減るので、代わりに来てみませんかと声をかけてくれたことでした。当時私は医師10年目で、漠然と心臓血管麻酔を専門にしたいと考えていました。岩手県内では心臓血管手術を行う病院は2つしかなく、他施設の手術法、麻酔管理法を見てみたいと思っていたのもあり、国内留学を決めました。当時、当医局には十分な数の医局員がおらず、毎日が自転車操業のような状態だったのですが、それでも2年間の留学を承諾頂けたのはとても有難いことでした。

国循は心臓疾患・脳疾患に特化したハイボリュームセンターで、国内有数の症例数を誇っています。全国から多くのレジデントが学びにくる中で、いきなりスタッフとして飛び込むのは不安もありました。実際、日々の生活は想像以上にストレスフルだったのですが、終わってみれば非常に実りある充実した毎日でした。国循の麻酔では循環生理に基づいた麻酔計画、正確な手技、手術の進行や病態変化に合わせた柔軟な思考が求められます。特に循環生理学は麻酔管理の土台となるもので、上級医たちの深い洞察と理解には日々驚かされるばかりでした。レジデントやスタッフが麻酔記録と手術を見比べながら毎日のように熱く議論を交わしていたのを今でも思い出します。日本一の麻酔管理を担っている・・・それが本当かどうかは確かめようがないにしても、彼らからほとばしる、ただならぬ矜持のようなものは確かに感じられました。心臓血管麻酔に対する国循の姿勢は今の私に大きく影響を与えています。

仕事を措いていえば、貴重な人とのつながりを得られたこともまた幸いでした。国循は毎日が大変な分、同じ時期を過ごした仲間とは不思議な絆が生まれます。学会などで顔を合わせた時、久しぶりにお互いの近況を語り合う。それもまた楽しいものです。また、国循にはサイクリング部があり、そのメンバーとは毎年、新年会や全国各地のイベントで会うことができています。私は2025年4月からアリゾナ州フェニックスに留学予定ですが、その留学先と私を繋いでくださったのも国循時代の上司でした。人生の転機がやってくるとき、人とのつながりの大切さを感じずにはいられません。先輩・後輩の別なく、私は本当に人に恵まれてきたと思います。

留学することによって、何か必ず新しいものが得られます。それは必ずしも成功体験ではないかもしれません。しかし、後から振り返ってみれば、それはすべて成功なのです。もし読者の方が留学を考えられているのであれば、ぜひおススメします。心臓血管麻酔・小児麻酔・産科麻酔・集中治療・ペインクリニックなど、麻酔科のサブスペシャルティは様々です。過去の留学実績の有無にかかわらず、当医局はもっと学びたい、外の世界を見たいという先生方をサポートする用意があります。積極的に学び周囲に還元していくことが、その人のみならず、組織を育て、強くすると思います。興味がある方はお気軽にご相談ください。

最後に、留学に御理解いただき、温かく送り出してくださった鈴木教授はじめ医局員の方々、厳しくも辛抱強く教えてくださった国循の先生方、そして日々私を支えてくれた家族に心から感謝いたします。ありがとうございました。

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